女将のお針箱

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オオイヌノフグリ

手をつないで散歩する ふたりの背中に うららかな春の陽が たっぷり降りそそいでいた   彼はふと立ち止まると その場にしゃがみ込んだ そして何かをじっと見つめている 「どうしたの?」 そう尋ねる私を見上げて 「この花の名前 知ってる?」 彼の視線の先をたどると 小さな水色の花がたくさん 春風に吹かれ 揺れていた 「オオイヌノフグリって言うんだ。」 自慢げな笑顔が  ...
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おてがみ珈琲

見知らぬ街を歩いていた ひとけのない田舎みち 古びた二階建ての建物があった 今はもう使われていないだろう 入口のアーチが洋風で屋根が瓦葺き ちぐはぐな印象を受ける 色彩を忘れたような景色 ひとりの少女が私の目の前を走り抜けた 今にも朽ち果てそうな建物とは対照的に その赤いスウェットパンツが妙に際立って見えた   映画「シンドラーのリスト」に登場する 赤いコートの少女みた...
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